[特別寄稿]
台風の名前はキキョウ 
松 下 祐 子

1.美しいノートが理科を好きにさせる。
 子どもの興味関心は教科の枠を超えることがある。ノート指導で丁寧に文字を書くことが習慣にな っている子は理科のノートが美しい。文字の丁寧さだけではない。表は定規で整え、記録も正確な子 が多い。ノートが美しいと学習態度が良くなる。板書を丁寧に写し自分の考えを書き込むから。表を作るのに線を引く。フリーハンドでなく定規を使うので美しい。どこに表を書けばいいかを考えている。だから、数値の整理も正確。美しいノート指導の初めは国語科である。その力の活用が美しい理科ノート。この力が理科を好きにさせていると思うことがある。

2.語句に興味を持つことが理科学習を確かにする。
 音読集会の最初は国語科の内容が多かった。声に出すことだったら理科もでききると考え理科の学習内容を音読に取り入れた。いわゆる「理数音読」である。音読教材になるように説明文として形を整えることに努力した。理科の学習内容を短い文にするのに文章を作る能力を問われているように思えたことも度々ある。

 国語科で辞書を調べることが日常的になっているので理科の授業で分からない語句が出てくると辞書を調べる。語句に関心を持つと理科の学習が確かになる。その手応えを授業で度々経験している。語句に興味を持つ子は理科学習が確かに習得していると思えることがあるから。

 5年生の理科授業で、「台風と気象情報」を指導した。教材には2013年9月初旬に発生した台風17号。台風の名前にある数字の「17」の意味を確認した。その後、台風にはもう1つ、アジア名というものがあることを紹介した。台風17号は「トラジー(TORAJI)」という名前であることを説明した。子どもたちからから日本語でどういう意味なのかという質問が出た。質問に答えるのでなくクイズにした。ヒントは花の名前。花の名前という手がかりを得て、知っている植物の名前を次々に言い出した。多く出てきたのは、ヒマワリ、パンジー、チューリップなど身近な花の名前。「違います」「違います」と続く。他にどんな花があったのか考えていく。記憶をたどっていく過程で音読集会で、耳にしたオミナエシ、フジバカマという植物の名前を発表する子がいた。「違うけれども、おしいです」と返答。勢いをつけるために、トラジーが「秋の花」であることを二つ目のヒントにした。辞書を調べる子、机の中から音読ノートを出し始める子。ハギ、ナデシコと答えが続き、最後に正解のキキョウにたどり着いた。

 音読ノートには、「秋の七草」萩の花尾花葛花撫子の花女郎花また藤袴朝貌の花(「万葉集」山上憶良)が載っていた。
(京都女子大学附属小学校)