巻頭言
小4で書いた要約文が原点
合 田 厚

 今年1月、50歳になったことを機に卒業以降初めて京都市立小学校の同窓会があり、4割強の同期が38年ぶりに集った。

 残念ながら小4時の担任は出席されないとのことだったので、その前週末に親しい友人と一緒にその先生のご自宅を訪問し、先生に米寿のお祝いを申し上げた。この先生には、新制中学1期生の私のお袋が中学校で教わり、その20数年後、人事交流のため小学校で4年間だけ指導された際、1年間私の担任だったという偶然もあって先生との交流は続いていた。

 元々中学校の教師ということもあって、時に小4には難題な宿題を課せられたり、話の内容が高度であったりして、最初は戸惑った。忘れもしないのが最初の国語の宿題である。教科書冒頭にあった大石真さんの「貝がら」(ネットで検索すると数年前に高槻市のある小学校で道徳の研究授業で使われている)をノート1ページに要約することであった(光村版教科書で数少ない今も掲載されている「白いぼうし」は当時5年生の教材)。

 それまで読書感想文や作文は多々書いたことがあっても、一読して内容をまとめるというのは初めての体験。また物語文のため、文章にはない心情の変化も言及しないとなかなか解り易い文章にならないこともあり、小4に進級し立ての私たちには難題であった。

 先生は最初の国語の授業で2時間かけて全員に発表させただけで、特に模範解答を示さず、「このように全員の感じ方は少しずつ違うが、こうして要約する力をつけることは大切だ。」というようなことをおっしゃっただけだった。その後、骨格を組み立て、肉付けする方法も教わった。蛇足ながら、小4のクラスメートは、旧帝大3名、医学部2名を含め4分の1弱が国公立大学にその後進学した。

 中学高校では何気にレポートを作成することが苦ではなく、むしろ得意であったが、この小4の宿題が原点だったのではないかと時折当時を思い出すことがあった。

 ただ社会に出て書く機会が多いものの、満足できるいい文章が書けたと実感することが少ない。決められた分量でいかに解り易い、時には印象に残る報告書やレポート作成が難しいことかをずっと痛感させられ、いつも苦闘している。

 私の国語の表現力には納得いくゴールがいつまでも見えない。しかしながら、間違いなくスタート地点と思える原点はあった。
(小4保護者)