巻頭言
編集者冥利に尽きること
和 田 国 明

 十六年間在籍した『教育技術』から離れた今、毎号、雑誌を編集して全国の学校を取材できたのは望外の喜びでもあり、多くの先生方にご縁を頂いた。

 『小六教育技術』から編集者生活はスタートした。諸先輩から教育の不易流行や編集の基本を学び、毎号企画を考えた。初取材では青森へ。懸賞論文の贈賞と執筆依頼を兼ねて、三内丸山遺跡の取材や寺山修司記念館を訪問し、取材の楽しさを知った。

 「百聞は一見に如かず」。各地の学校現場の取材こそ、何ものにも替えられない経験になった。四十七都道府県、北海道から西表島まで、日本の教育現場を訪問できた。長野冬季オリンピック関連企画や小笠原へ赴任した先生のエッセイ「小笠原父島ここだって東京」や、インタビュー「十二歳だった!」では高校時代の同級生だった山田かまち君のお母さんも取材できた。十七歳で早逝した彼の生い立ちや母の思いを聞くことができた。夏には、「戦争」体験を風化させない為にも、広島、長崎、沖縄など資料館や語り部を取材し、「平和」を考えた。

 ニューヨークのフォード財団で緒方貞子氏に国際協力の話がきけることになり、海外出張へ。取材記事は、『小学五・六年生』誌でも掲載し、国際協力の貴重な話が子どもたちにもきっと伝わったことだろう。

 京都桂の白川静先生のご自宅にお邪魔し、白川先生と同郷のライター中村栄さんと、吉永幸司先生を対談者に、「漢字」についてお話を聞けたことは貴重な経験だった。

 有名無名の取材対象者にアポイントを入れ話を聞き、それを限られた誌面で編集構成する。一つでも授業や生き方のヒントになれば良いと思いながら・・・。編集は企画に始まり、企画に終わる。

 「行ってみたい。会ってみたい。やってみたい。」好奇心の連続である。マンネリを感じながらも、新しい人がやってないことに挑戦し続けたい。原稿紛失や、締め切りが過ぎても原稿が届かなかったり、苦い思い出は数知れず。

 101新書『教育格差の真実』、犬山市の学テ不参加の『学びの学校づくり』、『京女式シリーズ』など多くの企画を世に出した。今は多くの教師たちとのご縁に感謝の気持ちでいっぱいである。そして、七年後の東京五輪を目標に、新たな企画を虎視眈々と狙っている。
(小学館 児童・学習編集局 教育企画室)