[特別寄稿]
ききたくなる授業のコツ 「おはなしきいて」
砂 ア 美 由 紀

 「おはなしきいて」(光村1年上)は、子供が自分のたからものについて説明し、それについて友だちが「なんさいのたんじょうびにもらったのですか。」と質問をする教材である。話し手が初めに語り、聞き手の子供は話を聞いてからそれに対する質問をするという手順が示されている。
だが、1年生の実態を見てみると、初めに発表を聞くと、話をきいて満足している場合が多い。質問の必要性を感じていない子もいる。友だちの説明の後は、その物への興味・関心がさほどなくなっているのではないか。子供たちが、もっと興味をもち、「聞きたくなる」ような教材の扱い方はできないものかと考えた。
 1年生の子供に興味を持たせるには、「ききたい気持ちにさせること」「何だろうという関心を持たせること」である。そこで、子供たちの好きなクイズ形式を用い「質問から始めるおはなしきいて」を考えた。

 2学期はじめの学習で、夏休みの思い出をテーマに、子供たちに思い出の品物を持って来させた。話し手は品物を袋や箱に入れて、中身が分からないようにしておく。その中身をクイズにして、聞き手に、答えをさぐるための質問をさせる。聞き手が質問する際には、「どんな大きさですか」「何ですか」「どんなとき使いますか」「どこですか」といった曖昧な言葉ではなく、具体的な言葉で質問をさせる。大きさを問うなら、「筆箱よりも大きいですか」、形を問うなら「まるいかたちをしていますか」のようにである。以下は子供のやりとりである。
聞き手「海で使いますか。」
話し手「はい。海で使います。」
聞き手「まるいかたちをしていますか。」
話し手「はい。まるいかたちです。」
 この時点で、聞き手の子供たちは、ビーチボールや浮き輪を想像している。だが、次の質問でその予想がひっくり返る。
○「すいかのもようがついていますか。」「いいえ。」
○「空気をいれますか。」「いいえ。」
 ここで聞き手は予想を変え、質問を考え直す。
○「だれでも一つは持っていますか。」「はい。」
○「それは教室の中にもありますか。」「はい。あります。」
○「外に行く時、つかいますか。」

 このように、聞き手に答えを予想させ、それを確かめるような質問を投げかけさせるのである。また、答える方は実物(答え)を知っているので、余裕をもって答えることができる。このように、クイズの答えがわかるまで、聞き手は興味を持って思考をめぐらせていた。クイズの答えを知り、それについて話し手が話す。また、新たなおたずねがしたくなり、子供たちが共通の話題で盛り上がった。
(京都女子大学附属小学校)