本棚  今を生きるための現代詩
渡邊十絲子 著
講談社現代新書 2013.5 760円
今を生きるための現代詩

 現代詩は難しい、わからない、と思う。だが、帯には「詩をよむってそういうことだったのか! 詩人が明かす至福の味わい方」とある。

 小学生の頃から詩が好きだった著者が、中学2年の国語教科書で谷川俊太郎の「生きる」に出会ったとき、心がふるえなかったことを語る。「この詩は、詩に出会いたての中学生の理解力で『こなせる』ほど手軽な詩ではない」という。なぜなら、ヨハン=シュトラウスのワルツやピカソのゲルニカなどの「大人の一般常識」や、「産声があがる」「兵士が傷つく」ことの映像的イメージを共有しないと、この詩は読む人に伝わらないからである。平易なことばで書かれているから「わかりやすい」とはいえない。この詩は、「知的世界の一般常識」を作者とわかちあえる読者だけに供された「おとな向けのおしゃれな小品」なのであるという。

 解釈したり解説したり、作者の言いたいことを考えたりすることが詩の読み方ではない。「詩を読んでいてうれしいことのひとつは、その詩を読むことではじめて知ったような感情や知覚の微妙なありようを、あとになって実際に体験しなおすことがある、ということである。」現代詩は「読んでわかる」というより「感じる」「味わう」ものなのだろう。
(常諾真教)