本棚  滋賀県謎解き散歩
中井均 編著
新人物文庫 2013.5 857円
滋賀県謎解き散歩

 謎解きというもののクイズ形式の本ではないし、観光ガイド本でもない。地域の自然、文化、民俗なども含めたコンパクトな歴史案内の書である。現在は中経出版から刊行されているが、元は歴史書の専門出版社であった新人物往来社の図書である。

 「滋賀県ってどんなとこ?」から始まり歴史、人物、城郭、琵琶湖、トリビア、民俗の7章で構成されている。各項目が数ページにまとめられていて読みやすい。

 本書で初めて知ったことがいくつかある。例えば、栗東市発祥の辻鋳物師(つじいもじ)。江戸時代に江戸や京都、大坂だけでなく、新潟、松本、駿府、金沢など18都府県40か所に出店を構えて操業していた。鍋・釜などの生活用品、鋤・鍬などの農業用具、梵鐘・燭台など社寺什器、さらには鋳銅製の仏像や鳥居まで多種多様な鋳造品を作っていた近世最大の工業技術者集団であったという。

 また、寛政年間(1800年前後)に、木内小繁という人が石のコレクションを展示した「石亭」(日本初の常設博物館)が草津にあったという。近江には戦国時代からたくさんの城が築かれたが、玄蕃尾城(長浜市)鎌刃城(米原市)などは知らなかった。

 全都道府県のものが刊行されているので、旅行で訪れる前に読んでみると興味が増すだろう。
(常諾真教)