本棚  ことばの発達の謎を解く
今井むつみ 著
ちくまプリマー新書 2013.1 860円
ことばの発達の謎を解く

 著者は心理学、認知科学の研究者。赤ちゃんがことばを獲得していく過程を、実験に基づいて明らかにしていく。

 子どもは「大人にことばの意味を直接教わり、間違いを直してもらいながら覚える」というのは誤解で、実際には、子どもは「大人の話しかけを自分で分析し、自分でことばの意味を考えて覚えていく」のだという。

 赤ちゃんは聞こえてくる音声を単語に区切っていく。何度も現れる付属語(助詞)に気づき、それを手がかりにする。そうして切り分けた単語をストックしていく。まだ意味は分からず、音のかたまりとしてである。ストックが増えていくと、新しい単語を見つける助けになる。

 まずモノの名前から覚える。お風呂に浮かんでいるおもちゃが「アヒル」であると覚えても、それがおもちゃ箱にあっても「アヒル」であり、さらにはぬいぐるみも絵本の絵も、池で泳いでいるモノも「アヒル」であると一般化していかなければならない。動詞、形容詞…と1語ずつ…と考えると気の遠くなるような作業である。

 個々のことばの意味を常に修正しながら覚えると同時に語彙全体のシステムも構築していくのだという。
(常諾真教)