お気に入りの斎藤隆介作品を紹介しよう
谷 口 映 介

「モチモチの木」の読解で身につけた力をもとに、お気に入りの斎藤隆介作品の紹介文を書いたり、交流したりすることを通してその魅力を伝え合う姿を目指す子どもの姿として単元を設定した。

◆読む視点を子どもと決める
 初発の感想から、次の3つの読みの視点を子ども達と共に設定した。

1 豆太とじさまの人物像を読む
 まずは、場面設定を読み取った後、叙述に即して人物像をまとめた。その際に、「豆太のつぶやきノート」を活用した。吹き出しに想像した心情を書かせることで、人物になりきって読むことができた。大切にしたのは、どの叙述から考えたのかを明確にして発表させることである。その上で交流させることで、多様な考えに気づくことができた。意見は本文を拡大した模造紙に記録しておき、教室に掲示することで学習の足跡を残した。子ども達も、参考になった意見を教科書プリントに書き込むことで考えを深めることができた。

2 豆太とモチモチの木との関係を読む
 物語に深く関わるモチモチの木への豆太の態度の変容を昼と夜とで対比させた。また、じさまのモチモチの木を通した豆太への思いも考えた。そうすることで、クライマックスでの豆太の変容をより浮き立たせることができた。

3 人物の変容を読む
子ども達が印象に残ったこととして挙げたことが、豆太が物語の途中で変わっていることである。そこで、「何が豆太を変えたのか」を中心に話し合うことにした。事前にクライマックスでの「豆太のつぶやきノート」の吹き出しに心情を書かせたり、最初と最後での豆太の様子をまとめたりすることで話し合う材料を集めていった。交流では、「じさまを助けたいという強い気持ちが豆太を変えたのだと思う。」「じさまを大切に思う気持ちが、おくびょうだった豆太を変えて、医者様を呼ぼうと必死にならせたのだと思う。」等、これまで読み取った人物像や場面設定を活かしながら発表することができた。ワークシートには、友達の意見をメモする欄を作っておき、なるほどと思った意見は赤で、自分の考えと違った意見は青で色分けをしながら聞くようにさせた。

◆学びを活用する
 学習の出口では、並行読書で読みためた斎藤隆介作品の中から一冊を選び、人物の魅力・変容・お気に入りの場面等を中心に紹介文を書かせた。子ども達は、学習の計画段階から目的意識を持っていたため、選んだ作品を再読しながら意欲的に書くことができた。
(滋賀大学教育学部附属小)