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わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か
![]() 著者は劇作家、大阪大学大学院教授、各地の小中高校でコミュニケーション教育の指導もしている。 子どもたちのコミュニケーションについての問題点を3つ挙げている。1つは<コミュニケーションに対する意欲の低下>。狭い仲間内でしか行動しないし、学校でも家庭でも単語だけで通じる。このような子どもたちに、スピーチやディベートなどの「伝える技術」を教えても、「伝えたい」という気持ちがなければ定着しない。「伝えたい」という気持ちは「伝わらない」という経験からしか来ないのではないか、と著者は言う。2つめは<コミュニケーション問題の顕在化>。例えば「無口な職人さん」がプラスイメージではなくなった。3つめは<コミュニケーション能力の多様性>。 書名にかかわって次のような指摘がある。「心からわかりあえることを前提とし、最終目標としてコミュニケーションというものを考えるのか、『いやいや人間はわかりあえない。でもわかりあえない人間同士が、どうにかして共有できる部分を見つけて、それを広げていくことならできるかもしれない』と考えるのか。」 第1章 コミュニケーション能力とは何か? 第2章 喋らないという表現 第3章 ランダムをプログラミングする 第4章 冗長率を操作する 第5章 「対話」の言葉を作る 第6章 コンテクストの「ずれ」 第7章 コミュニケーションデザインという視点 第8章 協調性から社交性へ 演劇の手法を用いた表現の指導もおもしろい。国語科で『木竜うるし』を読んで劇をするのとは全く異なる。ぜひご一読を。
(常諾真教)
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