伝え方を学ぶ時間づくり 和歌山と草津の小学校環境実践交流会
蜂 屋 正 雄

 先日、前任校である草津市立笠縫東小学校の環境学習交流会にゲストティーチャーとして出席させてもらいました。交流会は和歌山県田辺市立田辺第三小学校とのインターネット回線とテレビ会議システムを使ったもので、昨年から始まった試みです。
 簡単に笠縫東小学校の環境学習について書いておくと、4月から10月の間、各学年の生活科や理科、総合的な学習の時間で、地域の自然や場所に出向き、調べ学習を行います。その調べ学習でわかったこと、考えたことをポスターにまとめ、「東祭り」という地域の文化祭で発表をします。環境を意識した地域学習でもあり、また、地域の大人、友だちといった相手を意識した言語活動でもあります。
 今年は葉山川の生き物と、むかしの葉山川との比較とを中心に発表をしていました。一連の発表の後に、質疑応答があります。その時の学年主任の回答のさせ方が面白いと思ったので紹介します。

「なぜ、むかしの葉山川について調べようと思ったのですか。」
という田辺第三小学校の質問に対して、「応えてくれる人」といって1人の子に答えさせました。
「葉山川が好きだから。」
 これではいかにも個人的な答えです。先生は「そうだね」といって発表したことに対して肯定とねぎらいの言葉をかけた後、また次の子どもを当て、答えさせました。
「むかしの葉山川は、洪水を起こしたりして大変だったことを知ったから。」
 内容的には一歩質問の回答に近づいた文章になった。このように、4年生の子どもたちは、まだまだ自己中心的な答え方が多く、当初の「なぜ」には答え切れていない回答が多かった。
 しかし、その後、2人、3人と当てていくうちに、だんだんと言葉が増え、親切な説明になってく。頃合いを見計らって、
「○○さん、それでは、今までに言ってくれた人の話も入れて、質問に答えてください。」
といって、回答をさせていました。1つの質問に対して、3分くらいの時間がかかってしまいますが、ある子をいきなり当てて答えを言わせるより、質問した相手にわかりやすい形で親切に回答できていました。
 加えて、そのやりとりを見ながら、「他の子が答え方を学べる」というところが良いと感じました。発表が上手に「できたか」「できなかったか」に関心がいくことが多いですが、このような「本番」の中で、子どもたちの学びがどこにあるかという点で見ると、少々流れは悪くとも、発表した子も、聞いていた子も学ぶことのある良い交流会でした。

 この経験をまたどこかでふりかえり、論理的な話し合いへと位置づけてほしいと思いました。
(滋賀県立琵琶湖博物館)