本棚  はじまりの数学
野崎昭弘 著
ちくまプリマー新書 2012.10 780円
はじまりの数学

 数学は嫌いという大人は多い。できる・できないがはっきりわかるので、少しでもわからなくなると嫌いになってしまう。また、個人差も大きい。日常生活には小学校4年生までくらいの算数で間に合うのに、高校までにかなりのレベルまで学ばなければならない。しかし、それにはちゃんと理由がある。というので本書を読んでみた。

 第1部では、エジプト、バビロニア、ギリシャの古代文明ではどんな数学が誕生し発展したのかが説明されている。そして、現代の科学技術はもちろん、経済学にも数学が使われている。国家として国民の「数学のレベル」をある程度高めておかないと、現在の生活水準の維持が難しいのだという。また、個人にとっては、急いで結論を出したり直感的な判断に頼らず、しっかり考える力を養うことが必要なのである。

 第2部では、「考える楽しさ」「わかるうれしさ」が具体的な問題を通して解説される。その中に「リボ払いの恐ろしさ」というのがある。無理なく返済できそうに見えるが、返せるお金も返さないことによって利息がふくらむので、カード会社にとって儲かる方法なのである。数学が賢い生活に役立つ1例である。
(常諾真教)