おはなしをたのしもう  ゆうだち(1年光村上)
吉 永 幸 司

 読むことの言語活動に「本や文章を楽しんだり、想像を広げたりしながら読む」がある。本や文章を読書の対象として取り上げる言語活動である。楽しんで読むには、お話に描かれている世界を想像豊かに読むことが必要である。「ゆうだち」はお話を楽しむことを目的として位置づいている。

  1 1年生が楽しいということ
 1年生が楽しいと思えるのは次のことである。
○お話に登場してくる人物を自分と同化して考えて読めること。
○読んで思ったことを先生や友達に話し、聞いてもらえること。
○文章が自分の力で読めること。
○新しい言葉を増やすこと。
 主として「ゆうだち」を意識して考えたが、教室で学ぶことが楽しいと思えることが必要である。
 そのためには、文章がなめらかに読めるようになること、発表の機会を得て考えが述べられるようになること、登場人物が好きになることなどがある。

2 確かさと楽しさを積み上げる
 登場人物や出来事は早い段階で理解させるのは確かな読み。指導は当然として、「思ったこと・す きなところ」を見つけさせるのは楽しさにつながる。
 すきなところは、自分の経験と重ねて読んでいることが多い。教科書では「おはなしのどこがすき ですか」という問いかけをしている。すきなところを見つける。見つけたことを言葉にするという手 順である。登場人物である、うさぎのこもたぬきのこも最初は仲良しでない。「あわてて口をおさえ ました」「ぷいとよこをむきました」などは理解させたい言葉である。「なかよしでない」というこ とであるが、文にすると2つが必要であることは教えておきたい。
「けんか」も同じである。言葉は知っている。しかし、状況は書いていない。弟とのけんかを思い出 す子もいる。意地悪なできごとを思い出す子もいる。1人で考えられなかったことがみんなで考える とよいことが広がることに気づかせるのである。

3 「どこがすきですか」を問う
 誰にでも答えられる問いは「どこがすきですか」である。「2人が仲良しなったところ」という答え方もある。「やんだ」という会話をあげる子もいる。好きなところが後半に集まる。それを足場にして考えを広げる。「いいことを思いつきました」「大事なことを見つけました」と支える。雷の場面も楽しさに加わってくる。始まりと終わり、山場を意識して読めるようになる。
(京都女子大学)