第40回国語教育研究集団合同研究会に参加して
谷 口 映 介

【研究主題】
 人間力を高める国語科学習指導〜これからの社会に役立つ言語力〜

『国語力は人間力である』これはさざなみ国語教室で吉永先生がいつも言っておられる言葉である。国語科は、社会に出て言葉を通して人と関わるために重要な役割を担っていると感じている。以下で今回の実践を紹介する。

◆東風の会提案
ノート1冊を使う『大造じいさんとガン』」と題して、仁川学院小学校の吉村教諭が提案された。実践では、ノートを1冊与え、全文視写及び書き込みをし、課題に沿って話し合いながら読みを深めていった。学習の出口では、椋鳩十の別の作品との相違点を比較させたり、物語の続きを書き、交流したりするという流れであった。
 本実践から、読みのポイントを焦点化することの重要性を学ぶことができた。書き込みで何を考えさせるのかを学習の軸として明確にしておけば、考えを整理し、高め合う学習が保障されるであろう。また、自分の考えや全体の読みの変容が表れるノート作りができれば、具体的な話し合い活動が展開できるのではないだろうか。書き込みという操作を通してそれぞれの読みの価値や多くの考えに触れられれば良い学習になると考える。

◆竹の会提案
作品の世界を深く味わおう」と題して帝塚山小学校の辰巳教諭が提案された。学習の軸は、「ひとり勉強」である。子ども達の「読みたい」という意欲を喚起し、読みの課題作りをする。その課題に対して自分の考えを持てる時間を保障されていた。
 学習では、宮沢賢治の「やまなし」を題材に、五月と十二月の場面の対比から考えたことを交流されていた。また、表現を味わったり、擬音語・擬態語・比喩表現などから豊かに想像を広げたりすることも丁寧に指導されていた。国語科では、相違点を比べたり、場面を比べたりするなど、対比的認識を高めることは重要であろう。そこで発見したことや考えたことを全体の場で話し合うという流れは自力で読んだり、言葉にこだわりながら読んだりする力を身につけさせる上で有効な手段の一つであるだろう。

◆講演 東風の会 多賀一郎氏
「聞く」力を鍛えることの大切さを改めて考えさせられた。聞く力は見えにくいものであるが、だからこそ人権教育の視点、学級作りの視点からも真っ先に鍛えるべき力であることは確かである。「耳と目と心で聴く」取り組みを続けていくことが社会に役立つ力を獲得する上での近道であると実感した。人間力を高める国語科の授業を目指して日々実践を積み重ねたい。
(滋賀大学教育学部附属小)