発言と発問
藤 井 隆 一

 授業における子どもの発言。その量や質について発問との関係で考えた。教材は「ゆうすげ村の小さな旅館」(3年)の冒頭文。

 わか葉のきせつでした。ゆうすげ村のゆうすげ旅館では、山に林道を通す工事の人たちがとまりに来て、ひさしぶりに、六人ものたいざいのお客さんがありました。ひとりで旅館を切りもりしているつぼみさんは、朝早くから夜おそくまで息をつくひまもありませんでした。

 つぼみさんはゆうすげ村のゆうすげ旅館を切りもりしてること。久しぶりのお客さんがきたこと。工事の人なので、長い滞在になることなどから、忙しい日が続いていることを想像させたい物語の冒頭場面である。
 授業では、文章を理解させるために発問をした。発問によって、応答の違いがあるのは当然である。発問と応答の関係を授業記録から振り返った。

<発問1>分からないことはないですか。
 発言がなかった。おそらく、発問の意図が理解できなかったのであろう。あるいは、場面が想像できるので難しさを感じなかったのであろう。

<発問2>どんなことが分かりましたか。
「ゆうすげ」について辞書で調べたことを根拠に発言した子がいた。難しい語句を解決したことを分かったことと捉えるのが3年生なのであろう。

<発問3>この場面からどんなことが分かりますか。
 場面を加えることで発言が変わる。様子を想像できる表現に光を当てる発言が生まれた。
 ・若葉の季節に起こったことが分かりました。
 ・つぼみさんが、1人で切りもりしていることが分かりました。
 ・久しぶりに6にんものたいざいのお客さんがあったことが分かりました。
 文章の部分を発言しているようにみえるが、様子を確かめている発言である。

<発問4>普段、使っていない言葉はないかな。(略)

 発言と発問の関係から次のことがはっきりした。
○「分かること」では、学習活動は鈍いが、「場面」というように条件をつけると、発言が増える。
○分からないことより分かったことの方が発言がしやすい。
 今後の課題は、根拠や見つけた言葉を手がかりに想像を広げるという方向が見える発問を工夫することである。
(栗東市立治田小)