本棚
花の歳時記
さざなみ句会の俳句を作るとき、季語に花を用いることが多い。季節感がよく表れるし、イメージもしやすい。その反面、自分の中でイメージが固定してしまうことも否めない。 本書は季節の代表的な花のカラー写真とその花を詠んだ名句が掲載され、さらに句の解説も添えられている。レベルが違いすぎるので、自分の句作りの参考にすべくもないが、カラー写真を眺めているだけでも楽しい。 菜の花の四角に咲きぬ麦の中 子規 つきぬけて天上の紺曼珠沙華 誓子 白藤や揺りやみしかばうすみどり 不器男 石楠花やほのかに紅き微雨のなか 蛇笏 色鮮やかなコントラスト、微妙な色合いが目に浮かぶ。「野山の花と言葉が出会う奇蹟」と本書の帯に記されている。奇蹟を起こすのは至難の業だが。 小学校の国語科でも、日本の古典を学習することが多くなった。俳句も鑑賞だけでなく、子どもに作らせる機会も多い。しかし、子どもたちは意外に花の名を知らない。先生方はどうだろうか。名を知れば野の花もいっそう身近になるのではないだろうか。
(常諾真教)
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