本棚  花の歳時記
長谷川 櫂 著
ちくま新書 2012.3 950円
花の歳時記

 さざなみ句会の俳句を作るとき、季語に花を用いることが多い。季節感がよく表れるし、イメージもしやすい。その反面、自分の中でイメージが固定してしまうことも否めない。
 本書は季節の代表的な花のカラー写真とその花を詠んだ名句が掲載され、さらに句の解説も添えられている。レベルが違いすぎるので、自分の句作りの参考にすべくもないが、カラー写真を眺めているだけでも楽しい。

 菜の花の四角に咲きぬ麦の中    子規
 つきぬけて天上の紺曼珠沙華    誓子
 白藤や揺りやみしかばうすみどり 不器男
 石楠花やほのかに紅き微雨のなか  蛇笏

 色鮮やかなコントラスト、微妙な色合いが目に浮かぶ。「野山の花と言葉が出会う奇蹟」と本書の帯に記されている。奇蹟を起こすのは至難の業だが。

 小学校の国語科でも、日本の古典を学習することが多くなった。俳句も鑑賞だけでなく、子どもに作らせる機会も多い。しかし、子どもたちは意外に花の名を知らない。先生方はどうだろうか。名を知れば野の花もいっそう身近になるのではないだろうか。
(常諾真教)