移り変わりを読もう 「海をかっとばせ」「つり橋わたれ」
藤 井 隆 一

 「人物の変容や成長、ファンタジー作品のしかけのおもしろさに着目して読み、作品の比較や他の作品との出会いを通して、読書の幅を広げていく姿」を目指す児童の姿として本単元を設定した。

人物の変容や成長を読む
 物語を読み解く上で、今回は次の3つの視点で学習を進めた。
(1) あらすじをとらえる。
(2) 人物像をとらえる。
(3) 人物の変化をとらえる。
 (1)では、物語を一文で書き表す活動により、物語の大体をつかまそうと考えた。すなわち、「いつのお話か」「登場人物や中心人物は誰か」「お話の中で、一番大きな出来事は何か」をまとめるポイントとし、『中心人物が○○○によって、○○○になるお話』に合うように書かせた。一文で表すことにより、書かれている大体の内容をとらえることができた。
 (2)では、人物像をとらえるために、「文の中から中心人物(ワタル・トッコ)についてわかることを見つけて、どんな子なのか推理してみよう」と声をかけて学習を進めた。文の中から根拠を見つけ、楽しみながら人物を様々な角度から考えることができた。
 (3)では、「ふしぎな男の子と出会う前と出会った後でどう変わったのだろう」をテーマに、心の動きが分かる言葉を見つけながら話し合いを進めた。

ファンタジーのおもしろさ
 今回複数教材を扱ったのは、読み比べることで主人公の成長の過程や、ファンタジーの構成のおもしろさがより際立つのではないかと考えてのことである。そこで、二作品を読んだ後、比較しながら読む学習を取り入れた。私は、ファンタジーのおもしろさは、次の二点にあると考えている。
(1) 多様な考えが生まれること。
(2) 物語にかくされた「しかけ」を探しながら読むことで、本を読む楽しさが広がること。
 学習では、作品や中心人物の似ている点や、児童から疑問として出された「不思議な男の子はだれだったのだろう。」について話し合いをした。その後、学んだことや考えたことを文章としてまとめる時間をとった。さらに、並行読書で読みためた本の中から作品を紹介し合った。

○ファンタジーは、どこが入り口や出口なのか、男の子はだれなのかなどを考えるのが、とても楽しくてたまりません。
○どちらもふしぎな男の子の登場でできないことができるようになるという流れになっているという意見になるほどと思いました。

 今後も児童の「〜したい」「なるほど」を大切にした学習を実践したい。
(滋賀大学教育学部附属小)