▼研究授業を参観しているとき指導案通りに授業が順調に進むことに満足する。意図的計画的に行うのが教育なのだから、学習指導案は貴重である。しかし、授業はそれだけでないと最近思うことが多い。

▼ある授業の話である。板書は予定通り進んだ。相互指名で子どもたちも生き生きと話を進め、子ども主体の授業に見えた。指導案通り順調に進んだ。ところが、授業の途中で、普段は発言しない子、つまり、日頃と違う授業の場面が生まれたのである。相互指名なので、その子に発言の機会が回ってきた。

▼発言はたどたどしかった。しかも、内容は話し合いを深めるものではなかった。だから、多くの発言の中の一つとして通過していった。しかし、その発言がいつもと違うことをクラスの子は感じていた。それは、発言をじっと聞き、話がうまく進むようにという気持ちでハラハラしているような雰囲気があった。しかし、子ども達には、それを支える力はなかった。

▼学習指導案は「案」である。大事なのは、今日の子どもであり、今の時間に学ぶ子どもである。「案」を考えた時から時間が過ぎている。学習指導案の作成時は未来のものであっても、授業の時点では過去のものを未来のエネルギーにする力が必要であろう。(吉永幸司)