口惜しいけど、ちょっといい話
伊 庭 郁 夫

 7月7日、滋賀県交通安全子ども自転車大会が県立体育館で開催された。上位入賞を目ざし、連日練習してきた4人の6年生。

 地区大会を突破するまでの約1か月は、交通ルール等の学科や自転車の安全走行を昼休みを中心に練習してきた。
 県大会出場が決まってからは、昼休みは毎日学科に取り組み、放課後は警察官や地区の交通安全協会の方々の指導により自転車の運転技能上達を目指した。

 ここで、私が大切にしたのは、お世話になる方々への挨拶や言葉づかいである。
「6年生のYです。今日は、がたがた道走行を最後まで行けるようにがんばります。」
「6年生のOです。ジグザグ走行でピンを倒さないようにがんばります。よろしくお願いします。」
など、指導してくださる方々の前で自己紹介をして名前を覚えてもらい、目標を発表する。練習後は、
「ありがとうございました。初めてがたがた道が最後まで行けました。」
「今日は、ピンを2本しか倒さずにジジグザグ走行ができて嬉しかったです。ありがとうございました。」
等、成果とお礼を述べる。私が、立ち会わなくても自分たちで最初と最後の挨拶ができるようになった。

 大会前日に「7時に集まって練習しますか。」と4人に問いかけた。4人は、「はい」と即答した。
 当日、私は7時前に体育館の練習に向かったが、わいわい話し声が遠くから聞こえてきた。見ると、体育館前には、4人の選手と交通安全協会の役員さんが一緒である。聞いてみると、子ども達4人で連絡を取り合い「6時半に集まって学科の勉強をしよう」と約束しあったのだそうだ。子どもたちの意欲に感心した。また、子どもたちを温かく見守って下さる役員さんにも頭の下がる思いであった。

 大会は13チーム中、抽選で1番の発走順を引き当てた。緊張感が伝わってくる。安全走行テストや技能テストが終わり、2か月近くに及ぶ練習も終わった。
 1番くじをひいたM君は、新聞社のインタビューに答えていた。「ジグザグ走行が難しかったです。」等と、きちんとインタビューに応えていた。新聞に載るかも知れないという期待感を持っていた。

 いよいよ結果発表の時がきた。残念ながら、上位入賞はできなかった。会場を出てからも泣きじゃくっている子どもたちの姿があった。余程くやしかったのだろう。選手の1人は、1年ほど前ようやく自転車に乗れるようになったそうだ。よくがんばったと思う。
 翌日の新聞には、インタビューの記事が紙面を飾っていた。
(大津市立堅田小)