子どもの発言と発言の間
西 村 嘉 人

 学級を離れてしまったので、滅多に国語の授業ができない状況に身を置いている。ところが、出張者の担任の好意で、久しぶりに6年生の国語の授業をさせてもらった。教材は大好きな「カレーライス」。
 前時までに「ひとり勉強」で、文章を読んで思ったことを付箋に書き込んで教科書に貼り付けていたので、その考えを交流する時間を担当した。

 交流を進める前に自分の発言内容をもう一度整理するように指示し、じっくり聞かせるように範読をした。  続いて意見交流に入る。
 子どもたちに発表の指名方法を確認すると、いつも「リレー指名」をしているということだったので、普段の学級の通り進めることにした。
 一番目の子どもを指名し、発言を聞いて、うなずいて、黒板に発言のポイントを書き始めると、もう次の子どもが話し出した。急いで、次の子の発言を聞いて板書し出すと、また次の子が発言を始めた。思わず
「ごめん。もう少し間を開けて発表してください。」
と頼んだのだが、ほんの少し間が開いただけで、発言のペースはあまり落ちない。そんなときに、一人の子どもが次のような発言をした。
「お父さんは、『辛いんだぞう』というところで、中辛じゃなくて甘口のカレーが食べたかったのかなあと思いました。」
 すぐに周りの子どもの表情を見たのだが表情を変えることなく平然と次の順番待ちの手を挙げていた。
「ちょっと待って。今の発言、聞いてたよね。お父さんは中辛じゃなくて甘口が食べたかった、って。聞いてた人が何の反応もしないのはおかしいと思うんだけど、何か意見はありませんか。」
 これでようやく、読み誤りを訂正する発言が出てきた。ついでに、子どもたちには、
「一人の発表を聞き終えたら、自分の考え方とつながりがあるのか、全然つながりがないのか、考え方が全く違うのか、などを考えて、それから発言を続けるようにしよう。」
と話した。矢継ぎ早に指名して発表させると、聞くことに意識が向かず発表ばかりに意識が集中して、他の子の発表時間は単なる「待ち時間」になってしまう。聞いた後に「考える時間」をとることが自分の学習をさらに深める大事なポイントだと子どもに説明をした。
(彦根市立旭森小)