巻頭言
自分らしさを表す短話活動 ー人とつながる力をつけるためにー
笠 原  登

 現場実践を平成9年まで続けた。後半の20年間は、学級経営に力点をおいて「ことばと心」の教育実践にこだわる日々となった。
 その具現化は毎朝の独話活動であった。十人十色の存在感が光る学級づくりに私は全力を注いだ。
 とりわけ「自己表現力を育て、他者意識を高める」実践を次々と試みた。それは独話活動と連動する短作文活動である。
 ここで取り上げるのは「四字熟語で自分を表そう」という実践例の一部である。

【学習のめあてと方法】
○四字熟語を用いて「自分らしさ」を簡潔に表現しよう。
(1)四字熟語を集めて意味調べをする。(辞典活用)
(2)ペンネームにするとしたら、どれが自分らしさを表すか、ふさわしいものを一つ選定する。(長所・短所を考えて)
(3)自分のPR原稿を書く。(三百字以内)
(4)どうしてそのペンネームにしたか分かるように話す。画用紙に熟語を書いて黒板にはる。(一分間スピーチで)

【教師の役割】
○全員異なる熟語がペンネームになるように配慮する。一人一人の原稿に目を通して助言する。
○一人一人のスピーチにコメントする。特に着眼のおもしろさに触れ、必ず四字熟語で呼んであげる。
○画用紙は室内にはり出す。

《ペンネーム気分の短話》
 私のペンネームは小春日和です。
 先生の話を聞いて好きになった言葉です。
 秋の終わりから冬の初めごろ、ぽかぽかして春みたいな暖かな日のことを小春日和といいます。
 私の「言葉の貯金箱」にも入っています。この熟語は、音読みでないので、なんとなく心がほほえむ感じがします。そこが気に入ってペンネームにしました。いつも心のほほえみを大事にしていきたいと思います。(六年・N子)

〈先生のコメント〉
「小春日和さん、とても柔らかな響きがある、日本的な言葉ですね。名前があなたらしい心を表わしています。」

 今から15年以上前の実践だが、一人一人異なるその子らしさを発揮し合った場面が忘れられない。
◇小学校国語「話す・聞く指導の方法」参照(笠原登編 光村図書出版発行)