本棚  本へのとびら 岩波少年文庫を語る
宮崎 駿 著 BK1
岩波新書 2011.10 1000円
本へのとびら

 第T部は、スタジオジブリで作成された「岩波少年文庫の50冊」をもとにしている。表紙のカラー写真と短い紹介文がついている。
 例えば、『ニーベルンゲンの宝』では、「どう受けとめていいのか判らないまま、子供のぼくは強くこの物語にひかれました。今もそうです。」『ハンス・ブリンカー』では「古い本なのでなかなか出会いないかもしれません。ものすごく幸運だったら、出会えるかもしれません。あなたに幸運を…。」
 こんなふうに紹介されたら、50冊すべてを読んでみたくなる。

 第U部「大切な本が、1冊あればいい」は、インタビューをもとに構成されている。その中で、児童文学の持つ意味について述べている。「児童文学はやり直しがきく話である。…生まれてきてよかったんだ、…生きててよかったんだ、生きていいんだ、というふうなことを、子どもたちにエールとして送ろうというのが、児童文学が生まれた基本的なきっかけだと思います。」

 大人が児童書を読むとき、挿絵にはあまり注意を払わないが、挿絵についての著者の見方を知ると、もう一度しっかり挿絵を見てみようという気持ちになる。  子どもたちに本を薦める前に、ぜひ一読を。(常諾真教)