▼子どもが落ち着かないことを保護者が相談にきた。担任も指導をしっかりすると約束をした翌日。教科書がなくなったというできごとが起こった。昨日気持ちを引き締めたばかりなので慌てて探した。ランドセルに入れて持ってきたという。先生の慌てようを見ていた子も「今朝、ランドセルから教科書を出しているのを見た」と言う。頭を抱え込んで職員室に戻った。「きっと、家に忘れているのだから」と促されて家人に電話。「今日、その授業がないと思って用意をさせていません」ということ。最初からランドセルには入っていなかった。

▼できごとは解決をしたように見えるが、学級や学校の混乱の縮小版である。なくなったと思い込んだ子。「朝、見たよ」という子の言葉、いわゆる噂の類いである。次に、家人の電話の内容から推察すると、自分で時間割をしていないこと。行動に責任を持つことなど課題が見えてくる。もし、「うちのクラスで教科書がなくなった」と、帰って無責任に伝える子があれば、学級担任の信用はきっと希薄になるだろう。

▼1冊の教科書を巡る顛末であるが、このできごとをどのように扱うかは教師の力量であろう。大きなできごとにならずよかったと安心する。別の選択肢として、これを機に指導を見つめ直す機会にする等。(吉永幸司)