▼新聞の歌壇「布団から足裏はみ出し孫ねむる池亀のごと初夏雲のごと」。この作品を「布団から両手両足はみ出せる眠る姿は亀のごとしも」「はつ夏の雲のごとくに眠りをり小さき足裏はみ出しており」、作歌のポイントを担当した歌人俵万智さんは二つの作品に作り変えた。

▼理由は、短いなかに、二種類の比喩をを入れるのは無理があること。「孫」という語を外したこと。孫だからかわいいのではなく。姿そのものの可愛さが歌の主題だからという。

▼この理由に納得したのは、最近の教室風景から思い当たることが多いから。例えば、トラブルが起こるとそれだけを問題にすればいいのに、複数の要因を絡めて解決を複雑にする。比喩を二つ入れれば作品は良くなると思い込むのと同じ。また、人と関わらせて叱責する。同じことでも許せることと許せないことがあるという曖昧さ。孫だから可愛いのではなく姿そのものが可愛いのであるということと共通する。ルールが守れない、対人関係が行き過ぎるのは誰がではなく、行為そのものが指導内容なのである。

▼子どもたちも手加減の甘さを心得ていて、事実を伝える前に言い訳めいたことから話を始める。自分はその気はなかったとか、みんながしているからとか。修飾語をいくら増やしても事実は変わらない。「短く適切に」は短歌だけではない。(吉永幸司)