「柿山伏」を読む
白 髭 英 之

 伝統文化を楽しむことを目標に「狂言 柿山伏」(光村6年)の学習に取り組んだ。「柿山伏」は、空腹のあまり、他人の柿の木に登って、勝手に柿を食べてしまった山伏が、その持ち主にこらしめられる話である。

 学習の始めに知っている古典芸能について尋ねた。歌舞伎をテレビで見たという子どもが2、3人いる程度で、何も知らない子どもがほとんどであった。
 源氏物語や枕草子などのいくつかの文学作品については、社会科の歴史で習っているので、名前は知っているようであった。

 単元の目標のひとつに「日本の伝統文化に興味や親しみをもつ」とある。狂言は「身近な出来事や笑い話が多い」と紹介されている。笑い話となると、子どもたちは大好きである。親しみをもつためには、「柿山伏」のおもしろさに気付かせたかった。ただ、現代の子どもたちが、古典が醸し出すおもしろさに共感することは難しいのではないかと感じた。

 おもしろさに気付くためには、とにかく独特な文章に慣れることが必要であると考えた。そこで、
 ◆子どもひとりひとりで黙読。
 ◆「柿山伏」のCDを聞く。
 ◆教師による範読。
 ◆(話の筋がわからなくてもよいという条件つきで)自分が気に入った場面を音読する。
などの手だてを通して「柿山伏」の文章と向き合った。

 読むことを繰り返して、どのような話の筋なのかを書かせた。やはり、話の筋を理解できない子が多かった。そんな中で、
『腹をすかせていた山伏が、柿が実っている木に上って、柿を食べている時に柿主が出てきた。山伏は顔を隠していたけれど、柿主は、柿を食べているのは人だとわかっていた。けれど、からすやさる、とびだと言って、こらしめようとしていた。』
と書いた子がいたので、みんなに紹介した。その後、山伏と柿主の掛け合いの部分、山伏が柿主の言われるままにからす・さる・とびのまねを必死にする場面を音読させた。それを繰り返すと、おもしろさに気付く子どもが増えてきた。

 「柿山伏」のおもしろさについて尋ねてみると、山伏がからすやさるのまねをしているところがおもしろい、と書く子どもが多く見られた。
 学習後の感想より。
 o何年たっても、現代も昔も心は変わらない。考えることは一緒だと思った。
 o昔の人は、違う国の人のように感じるけれど、つながっていてうれしかった。

 日本の伝統が、いつまでも受け継がれてほしいと思った瞬間であった。
(彦根市立城南小)