本棚  語感トレーニング 日本語のセンスをみがく55題
中村 明 著 BK1
岩波新書 2011.4 720円
語感トレーニング

 昨秋刊行された『日本語 語感の辞典』(岩波書店)の著者による《語感》の解説書である。

 表現するためには、2つの方向からことばを選んでいる。1つは《意味》の面から、「菜種梅雨」「走り梅雨」「梅雨」「戻り梅雨」を区別する。もう1つは《語感》の面から、「にわか雨」「通り雨」「村雨」「驟雨」を感じ分ける。その結果、表現されたものから相手に伝達されるのは、送り届けたい情報だけではなく、その人の態度や性格、教養や価値観から、感じ方・考え方まで伝わるという。

 各項目の最初に問題がある。例えば、Q34。自分の( )に閉じこもってばかりいないで、( )に出てみたほうがいい。( )の目を気にしてちゃ、何もできないよ。( )そんなに甘くないのは確かだが、若いんだから、挑戦してみなくちゃ。( )には、「ア 世の中、イ 世間、ウ 世界、エ 社会」のどれがふさわしいか。この後に、語感の違いによって、雰囲気に違いが生じることが説明される。

 自分がどのくらい語感に敏感なのか、どの程度語感を考えて言葉を選んでいるのかを振り返ることができる。しかし、違いを感じない人間が増えていったら、死語となる言葉も増えるだろう。(常諾真教)