高学年に発表させる取り組み(2)
藤 井 隆 一

2.打った手だて
 学級の子ども達の気持ちは、決してやる気がないわけでなく、前向きな姿ばかりである。特に「すっきりするから」「人に分かってもらえると嬉しいから」という思いは、担任して、なんとか実現させてやりたいと思う。

 そこで、大きく3つの手だてを打った。これらは、主に先月号で述べた「なぜ、班で発表できるのに学級で話さないのか」の問いに対する子どもたちの反応から考え出したものである。
 1つ目は、「恥ずかしいという気持ちは悪いことではなく、むしろ、良いことである」ということを伝えること。2つ目は、自分の考えを述べるときに「〜です」と「〜だと思います」を明確に使い分けさせること。3つ目は、子どもの思いや考えを授業に生かすことである。以下に、これら3つの取り組みの具体を述べる。

(1) 恥ずかしいという気持ちは悪いことではなく、むしろ、良いことである」ということを伝える。
 ピアジェは、児童の発達段階を大きく4つの時期に分けた。8歳より上の時期では、それまでとは違い、自意識が芽生えてくると説いている。自意識とは、自分が他からどう見られているかと気にする意識である。先に述べた児童の反応から、明らかに他からどう見られているかという意識があり、結果的に、発表がしにくい要因となっている。きっと、児童にとって、この気持ちは、ここ1、2年で急に芽生え、そのため、とまどいや驚きを感じているのではないだろうか。そこで、以下の話をした。

「恥ずかしいという気持ちは、いい事だと思いますか。それとも悪いと事だと思いますか。恥ずかしいという気持ちは、自分が友達からどう見られているのか気になるために起こる気持ちなのです。この気持ちは、自然なのです。大事なことなので大切にして欲しいと思います。この、自分が他の人からどう見られているのか気になるという気持ちは、人によって違いますが、だいたい3年生頃になって芽生え始めてきます。
 ですから、君たちが、『恥ずかしい』『発表するときどきどきする』という気持ちになるのは、自然なことなのです。
 先生は、毎日、髭を剃って学校に来ます。先生は肌が弱いので、髭を剃ると、毎回、肌がヒリヒリします。また、上手に剃らないと血が出ることもあります。痛いので、できれば、髭は剃りたくありません。でも、周りの人が不快感を抱いてはいけないので、剃ります。ですから、『恥ずかしいな』という気持ちは、ごくごく自然で大切にして欲しい気持ちです。」
(栗東市立治田小)