先生は「話すこと・聞くこと」のモデル 〜初任者研修で 1〜
森  邦 博

 初任者の研修会で、国語科の指導についての講座を担当させていただいた。教室でも使えるようにと考えて、実習教材を自作して臨んだ。研修では、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「伝統的な言語文化」の3領域1事項の4つを実習するという構成で実施した。
 今回はその1、「話すこと・聞くこと」。

 「聞くこと・話すこと」の言葉の力とは、聞き手に分かりやすく話す力が求められることでもある。そこで、「話すこと・聞くこと」の実習では、2つの場合を比較して考える場面を作った。
A…はじめに、「大阪のおばちゃん」(私がその役)からの夏休みに遊びに行くから迎えにきてねという電話をメモする。(聞き手は研修者の代表)。電話は脱線が多く、整理してメモするのが難しい。おまけに返事や相槌を求められる。
B…つぎに、「ともこさんは どこかな」(光村2上)を使って、観点を明確にした、迷子のお知らせのアナウンスを、ゆっくりと2回繰り返し音読する。今度は観点がはっきりとしていてメモも取れる。繰り返しているので確認もできる。
 AとBを体験した後で、振り返り、比較して、気づいたことを書き、交流した。

 実習生からは、「観点の整理」「聞きやすい速さ」「大事なことの繰り返し」が大切であることを知った・気づいた・大切だと思った等の発表があった。
 「大阪のおばちゃん」は自分の言いたいことを次々に言って、言ったことは伝わっているものとの思い込みがある。それが聞き手を混乱させる。それに対し、アナウンスは、聞き手が聞き取りやすいように言っている。とすると、「話すこと」の指導をしっかりとすることは、「聞き手」(相手)のことを考える子が育つようにすることにもつながる。

 先生の話は、話し手のモデルである。子どもは先生の話を決してしっかりとは聞き取れないのだ、ととらえることが大事である。ところが、ともすると言ったことは聞き取れているはずだと思ってしまうことが多い。「大阪のおばちゃん」になってしまっている。そこで、「この前言ったのに」とか、「聞いていない者が悪い」と注意だけして指導したつもりになっていないだろうか。こんな話し手がモデルでは、聞き手を育てることもできない。だから、よい聞き手を育てようとすれば、まず先生の話し言葉が「観点の整理」「聞きやすい速さ」「大事なことの繰り返し」を意識して、聞き手が分かりやすい話ができる先生になりたいものですね、としめくくったのだった。
(大津市立中央公民館)