巻頭言
何も敢行せざれば,何も得られず
宮 田 哲 郎
●何も敢行せざれば,何も得られず 「積極的に事に当たろうとしない人には失敗もないが,また人としての大切なものを獲得することもできない」という教訓です。 自分は何もいらないから,何もしないという若い人が増えているようです。日本青少年研究所が実施した中高生を対象にした国際比較調査(アメリカ,フランス,韓国,日本の4カ国)によると,「この社会は努力すれば成功のチャンスはあるか」の問いに「YES」と答えた日本の中高生は29.9%と最低で,逆に人生を楽しんで生きると答えた者が多いという結果となっています。 「虎穴に入らずんば虎児を得ず」という気概などどこ吹く風で,「果報は寝て待て」派が増えているようです。また,子どもが一番好きなことわざは「棚からぼた餅」。一番嫌いなことわざは「石の上にも三年」だそうです。 何かを為せば必ず成功するというものではないけれど,一歩を踏み出さなければ何も始まらないのも事実です。その過程には失敗もあり,落胆もあります。人は成功から学ぶよりも,失敗から学ぶこともまた多いと思います。 武田信玄は,「為せば成る 為さねば成らぬ 成る業を 成らぬと捨つる人の はかなさ」と言っています。上杉鷹山は,「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり」と言っています。 定年退職した今,何ごとにも好奇心を失わず,感動する気持ちを持ち,日々新たに努力を惜しむことなく,精一杯生きたいと思っているのですが…。 ●唱道の人から行動の人へ ある講演会で聞いた話です。「唱道の人多けれど,行動の人少なし。立派なことを言う人は世の中にたくさんいます。しかし,言葉でいくら良いことを説いても行動がなければ何も変わりません。こんなこと,あんなこといろいろ考えて悩んでいる人は,結局何もしない人です」 ドキッとしました。自分は唱えるだけで,道を拓く努力をしていないではないかと思いました。良いと思ったらすぐに努力をしようと思いました。素晴らしいことでなくていい,ささやかなことをやり続ける人になれるよう努力したいです。唱道の人から行動の人をめざしたいと思っているのですが…。 (関西学院大学教育学部非常勤講師)
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