巻頭言
生きるってすばらしいよ
大 塚 富 章

 1年間に3万人を超える人たちが自ら命を断つ社会について考えています。何時の時代にも自死はありました。統計学的にいう自殺率が、30近い数字を毎年示す国はかつてありませんでした。社会全体が病んでいる、命が軽んじられている、閉塞感が支配し希望の持てない社会であるーーいろいろな論調がなされ分析がされています。ボランティアで「いのちの電話」が設置され、国も自殺防止に向けて公的機関を作り動き出しました。

 自分の存在について思索し「死」について考える青年期を多くの人が経験して今を生きています。ある人は自ら命を断つことは悪であるという信念で、ある人は「支えてくれる人があり、自分を必要としてくれる人があるから」と考えて、またある人は生きる事が楽しくて死など全く考えないーーいろいろです。16分間にひとりの人が自死する現実に暗澹たる気持ちになりますが、命を大事にする事、生きることのすばらしさを一緒に考えていく事も「教育」であり、一筋の「光」になるのでは、と思います。以前、学級通信の特集「わたしの教育観」の中からふたつの記事を。

つまずいたっていいじゃないか にんげんだもの
 2か月前、読書案内で相田みつを著「人間だもの」を紹介しました。その中に表題の言葉が出てきます。卒業生たちに贈ることばのひとつに、
「おおいにつまずいてください。人間は、ひとつつまずくとひとつ大きくなるそうです。恋をし、失恋し、失敗し、旅をし、つまずきを恐れず生きて下さい。先生なんかつまずいてばかりです。」
があります。エレベーターやエスカレーターに乗る人生もあっていいと思いますが、駄馬の如く、きょろきょろ休み休みの人生もまた乙なものだと思います。駿馬は素敵ですが、僕にはどこか寂し気に感じられてなりません。つまずきに強い人間になって欲しいなと思います。

まかせたら まかせきる
 「あなたにまかせます」信頼していますという思いと、あなたならきっと出来ますよという思いを織り混ぜて言うと、言い方の語感は優しくなります。それを聞いた時、子どもはとってもいい顔をします。方向が見る時、人間はいい顔をします。反対の時、荒れたりもします。まかされたら人は意気に感じるものです。「あなたにまかせます」と言う時、まかせる方には、明るい展望と余裕が必要なのではないか、まかされて途中で投げ出した生徒は、誰もいませんでした。
(京都府勤労者山岳連盟副理事長)