十分間作文を通して
北 島 雅 晴

 高学年を担任した年は、4月の時期に「十分間作文」を実施している。
 @テーマを伝え、書き方等の説明を聞く。(5分)
 A構想を練る。(5分)
 B記述する。(10分)
 合計20分の学習となる。(友達の作品を読み合ったりすることもある。)ABでは、話をせず、ひたすら考えたり書いたりする。記述終了2分前になったら、
「残り2分です。作品が終了するように書きましょう。」
と伝える。十分間作文は、書く習慣をつけることをねらいとしている。

   第1回目の学習。題材は、幼い日の思い出。今考えると思わず笑ってしまうような出来事がだれにでもある。書きやすさを考えてこの題材にした。
 記述する段階になると、ほとんどの子が黙々と書き進めるのだが、あきら君(仮名)だけはいっこうに書き始めようとしない。この学習は1回目ということもあり、4月の段階であきら君の状況も十分にとらえていないので、話しかけないで様子をみることにした。あきら君は、ついに何も書かないまま、十分間を終えた。あきら君は書く力に課題があるのだろうか。書く気持ちがないのだろうか。次の時間には適切な指導をしなければならないと考えていた。

 明くる日の朝、あきら君が提出した日記を読むと、十分間作文のことが書かれていた。
◇作文を書く時になっても、書くことが思いうかびませんでした。十分間たった時、やっと書くことが思いうかびました。でも、友達が国語ノートを集めてしまったので、ちょっとざんねんでした。

 この日の十分間作文は、別のテーマで書く予定であったが、あきら君に、1回目のテーマについて書くように話すと、うれしそうにうなずいた。
◆ぼくが、5才の時のことでした。お母さんがでかけていたので、一人でるす番をしていました。ごみばこをみると見たこともない虫がいました。(以下略)
といった書き出しで、十分間書きつづけた。(その後、ごみ箱を5階のまどから捨ててしまい、お母さんにひどくおこられたことが書かれている。)

 もしも、1回目の学習で、不適切な働きかけをしたり、2回目の学習の前に、日記に目を通していなければ、彼が集中して書く姿は見られなかったかもしれない。待ってみることの大切さを感じる出来事であった。
(草津市立志津小)