初発の感想を生かして
白 髭 英 之

 卒業前に「海の命」(光村図書6下)の学習に取り組んだ。
 太一の成長を通して、生きること、人としての生き方を考える教材である。学習の最後に、文中に登場する「こう思うことによって、太一は瀬の主を殺さないで済んだのだ。大魚はこの海の命だと思えた。」とあるが、この『海の命』とは何かということを考えさせたかった。題名にもなっているので、作品の主題を考えることに等しい。主題を考えることは難しく、子どもたちが叙述を味わいながら、自分の考えをもつようにしなければならない。

 文学作品を読む場合、必ず初発の感想を書くことにしている。子どもたちが気に留めたことがよくわかり、また、学習を展開していくにあたり、学習課題の設定に大きな手がかりを得ることができる。
 初発の感想に登場する教材文や場面を拾いあげてみると、
【文章】
 「海のめぐみだからなあ。」
 「おとう、ここにおられたのですか。また会いに来ますから。」
 「千びきに一ぴきでいいんだ。」
 「ぼくは漁師になる。おとうといっしょに海に出るんだ。」
 「ここはおまえの海だ。」
【場面】
 o太一が、おとうの死んだ瀬にもぐった。
 o瀬の主が全く動こうとせず、じっと太一を見ていた。
 o村一番の漁師であり続けた。
 o太一が瀬の主を殺さなかった。
 oクエにもりを打たなかったことを生涯だれにも話さなかった。
というような具合であった。

 これらの子どもたちの感想から学習課題を設定した。
 @太一の父はどんな人か。
 A「太一、ここはおまえの海だよ」とは、どういうことか。
 B千匹に一匹とは何を意味するのか。
 C海に帰るとは、どういうことなのか。
などである。

 子どもたちが心に留めたことをみんなで共有することで、学習に対する安心感が生まれたのではないかと考える。
 学習の最後に『海の命』とは何かを考えた。子どもたちの考えを集約すると、
 ●瀬の主   ●海全体   ●海を愛する人   ●海に住む生き物
 ●おとうや与吉じいさ   ●海に生きる人たち   ●自然と共存する考え方
 ●海と人との関わり方   ●海に生きる人の思い

 400字程度にまとめたのだが、本文に登場する人物から、海に対する考え方まで、考えは多岐に渡っていた。
 未来を担う子どもたち。豊かな感受性をもち、真っ直ぐ未来を歩んでほしいと願う。
(彦根市立城南小)