気になる表現って?
西 村 嘉 人

 6年生最後の文学教材。国語科の学習のまとめをする時期である。6年間の国語の授業でつけた力を発揮して、立松和平氏と向かい合ってほしいと考え、単元名を「表現に注目して」と設定して学習計画を立てた。

 第1次に3時間。そのうちの2時間を音読に当てた。音読しては、「登場人物は?」と尋ね、また音読しては「簡単に粗筋を言うと?」と尋ねる。或いは、「どんな言葉が印象に残った?」と質問する。音読することが中心なのであまり時間はかけない。子どもたちがまともに答えられなくてもかまわないのである。ただ、こうやって質問することで子どもたちの意識は、文字を音声化するだけの読みから、内容理解へと向かっていく。

 物語の大体が理解できてきたので、3時間目は「気になる表現」を探しながら読むことを課題にした。子どもたちには、
「『気になる表現』を見つけようと考えながら読まないと何も見つからないよ。それと、どうしてそこが気になったか言えるように読んでいこうね」と指示を出した。

 気になる表現を発表し合い、ひとり学習で着目する表現を確かめてから、第2次の学習に入った。いきなり子どもたちが、
「分からん!」と話し合いでこだわった。
「父もその父も、その先ずっと顔も知らない父親たちがすんでいた海に、太一もまた住んでいたというところで、なんでわざわざこんな書き方がしているのか考えたんだけど、分かりません。誰か分かる人はいませんか。」
「太一の家族が海に住んでいたということだと考えて読んでいたけど、どうですか。」
「そう思うんだけど、どうして『海に住んでいた』と書いてるのか分からない。海に住むってどういうことだろうと思って…。」
「海に住むって、海の中じゃないんだから、考え過ぎなんと違うかな。」
「山に住むだったら何となく分かるんだけど、海に住むってなんか変だと思って…。」

 この表現にこだわった子どもと話を返している子どもの読み方のずれが妙におもしろくて、聞いていたのだが、キリがなさそうなので、
「物語全部を詳しく読み取ってから、もう一度戻ってみると納得するかもしれないよ。」
と話して話し合いを進めた。
 最後には「太一も一人前の漁師として海に住んだ」と納得したのだが、こんな読み方ができるようになった子どもに感心した。
(彦根市立旭森小)