思いを伝える
箕 浦 健 司
卒業前に、「今、心に思うこと」をテーマに、スピーチをすることにした。内容は自由。小学校生活一番の思い出や将来の夢等、様々である。 学習課題は、「伝えたいことの中心をはっきりさせて話そう」。話す内容や構成を考えながら、スピーチづくりを始めた。ノートを「初め」「なか」「終わり」の三つに区切り、配布された付箋にメモを書き込む。子ども達は黙々と取り組んだ。 「先生、もっと付箋をいただけますか。」 「出だしは、問いかけで始めてもいいでしょうか。」 「これで、私が看護師になりたい理由は伝わるでしょうか。」 質問を多く受けた。ただ、今までとちがうところは、何をすればいいか分からない不安からの質問ではなく、「どうすればよいスピーチになるか」「どうすれば、自分の思いを友だちに伝えることができるか」という思いが伝わる質問であったということ。子ども達の熱い思いを受けて、こちらの指導にも熱が入った。 このスピーチは、卒業前のカウントダウンスピーチとして発表することを伝えた。学級の人数に合わせ、、卒業式の27日前から始めることを確認。「小学校生活最後」という言葉から、子ども達の意欲は俄然高まったようである。 2月8日から、カウントダウンがスタート。トップバッターはMさん。図工の時間に作成したカウントダウンカレンダーを持ちながら、緊張の面持ちでスピーチ。内容は、「この1年間、がんばったこと」。辛くてもがんばり続けた剣道についてのスピーチだった。聞き手も真剣に聞く。スピーチが終わると、割れんばかりの拍手が教室に鳴り響く。Mさんもも満面の笑み。 「あ〜緊張した!でも、自分ががんばってきたことが、友だちに伝わったことがうれしい。」 その後も、毎日朝の会には、心地よい緊張感の本、すばらしいスピーチが続いている。 もう一つ。6年生を担任すると、必ずしていることがある。保護者に依頼し、卒業を前にした我が子へ、手紙を書いてもらうことである。もちろん、子ども達には内緒。 国語の時間に、子ども達にこのことを話し、手紙を手渡す。初めは笑っていたり、「え〜」と行ったりしていた子ども達も、手紙を読み始めると、真剣な表情に。うれしそうに笑みを浮かべる子や、感動から涙を流す子もいる。保護者の思いが伝わったことが分かる。 そして、最後には、返事を書いた。学習課題は、「自分の気持ちを伝えよう」。書写の時間に学習した、手紙の書き方を確認するところで、指導は終わり。何も言わずとも、子ども達は黙々と思いを書き綴った。 後日、ある保護者から。 「先生、お手紙、ありがとうございました。あの子からあんな言葉をもらえるなんて。本当にうれしいです。宝物にして、大事にしたいと思います。本当にありがとうございました。卒業まであと少しですが、よろしくお願いします。」 (長浜市立長浜南小)
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