本棚  日本語ほど面白いものはない 邑智小学校六年一組 特別授業
柳瀬尚紀 著 BK1
新潮社 2010.11 1300円
日本語ほど面白いものはない

 著者は、翻訳不可能と言われていたジェイムズ・ジョイスの『フィネガンス・ウェイク』を日本語の技巧を凝らして翻した翻訳者である。子どもたちにとっては、『チョコレート工場の秘密』などロアルド・ダールの諸作の翻訳者である。

 島根県の子どもの本屋さんからの依頼に応えて、僻地の小学校で行われた2回の特別授業と邑智中学校1年生に向けての空想授業の記録である。

 1回目の授業では、言葉のはじまり漢字の話、韻を踏む翻訳やことば遊びの翻訳などを通して、「日本語は翻訳の天才」だと語る。

 2回目の授業は卒業前の2月。「康煕字典」や「薩摩辞書」「四角い卵」「幻獣辞典」などの本を題材に読書への誘いや、著者自作のいろは歌が提示される。

 小学生には難しい内容もあるが、子どもたちの感想からは、日本語の面白さ、楽しさに興味をかき立てられたことがよくわかる。新しい漢字を考えたり、ことば遊びに挑戦したりする。

 国語の授業の中で、まず、子どもたちに「言葉」や「日本語」への興味を感じさせることで大事ではないかと感じる。そうすれば国語学習授業への取り組み方も違ってくるのではないだろうか。

 同じ著者の『日本語は天才である』(新潮文庫)も併せてどうぞ。(常諾真教)