巻頭言
「思考・判断の能力」をどう評価するのか?
佐 藤 洋 一

一 「判断力」重視に賛成する
 「思考・表現力」はこれまでも全教科・活動で、特に国語科で重視されてきた。今回の新学習指導要領・「言語活動の重視」等により思考力と表現力の間に「判断(力)」が設定されたことは、私は戦後以降の授業・評価研究の在り方を考えるとき、非常に重要なポイントであると考えている。

二 判断は価値観・感受性・生き方
 一言で言えば表面的な思考や表現ではなく「習得」した知識・技能等の基礎・基本を自分の生き方や生活経験・価値観・感受性・生き方(関心意欲・立場やこだわり)等との関連から子ども自身がとらえ直すことができるような指導・支援と授業評価過程を重視している、とみることができる。

三 「判断力」は評価できないか?
 こうした「判断力」に関わる部分は「見えにくく評価できない」「教師の一方的な価値観の押し付けやイデオロギー教育になる懸念がある」等のご意見が予想される。私は、社会の困難・諸課題に対応して発揮できるような、「生きる力」となる「着地点で出発点」=表現力の在り方の基軸を「論理的な言語・表現力」に置くことがまず必要であるという立場である。
 論理的な表現力の評価でも例えば、以下のような観点をまず教師自身が評価できること、次に子ども達に眼に見えるように示すことが子ども個々の良さや課題を引き出し、教科・単元の学習を超える「メタ評価能力」・交流や質問の観点を習得・活用させることになるのではないか。
 以下の観点は、「習得」を生かした「活用」の能力が、子ども個々の考え方や感受性・生活経験の反映等として表れる部分である。

1 その子らしい着眼点や発想・表現、こだわりは生活経験、意欲や関心のありかた等はどこか。
2 「習得」を活かした「論理的な構成の型」の工夫(目的・相手意識・時間配分等)や主張に合った具体例・資料の選択、題名の付け方等はどうか。
3 わかりやすい説明力(習得)から説得力のある表現の工夫(活用)はどこに、どのように。
4 引用・要約・説明力に表れるその子どもの理解度・活用力の特色はどこに、どのように。

 教師はこれ等を「正確に」見取り、子ども個々と学級全体に返す。このような日々の指導・支援が、「判断力」や考える楽しさを鍛えることになるのではないか。
(愛知教育大学教職大学院教授)