作者の伝えたいこと
箕 浦 健 司

 「やまなし」の「五月」と「十二月」それぞれの幻灯を対比しながら読み進めた。対比の視点は、@かにの兄弟の様子 A天井から落ちてきたもの B情景描写、である。ノートに本文を視写したり、想像したことを書き込んだりしながら一人読みを進めた。最後にそれぞれの読みを全体で交流した後、「イーハトーヴの夢」の学習に入った。
 賢治の理想や生き様について読み取り、感じたことを交流しあった。そして、最終課題『「やまなし」で賢治が伝えたかったことは何だろう』について考えた。ここでは、対比の視点Aの「天井から落ちてきたもの」が何を表しているのかをヒントに考えさせた。

「わたしは、五月のかわせみは、自然災害や病気などを表していると思います。かにの兄弟がすごくおびえていたからです。十二月のやまなしは、よろこび、うれしさを表していると思います。賢治さんは、苦しい中にも喜びや希望を忘れずに生きることが大切だと伝えたかったんだと思いました。」

「ぼくは、かわせみはみんなと同じで恐いものだけど、やまなしは賢治自身ではないかと思いました。賢治は自分が病気の時でもていねいに教えたりしていて、いつもだれかのためにがんばっていたからです。やまなしは最後は食べられるんだろうけど、食べたものには喜びを与えます。そうやって人の役に立つことが伝えたかったんじゃないかなと思いました。」

「わたしは、五月のかわせみはいつ起こるか分からない自然災害や疫病などの恐いものを表していて、十二月のやまなしは希望を表していると思います。かにの親子は、やまなしを見てとてもわくわくしていました。苦しい農作業の中にも喜びを見いだす賢治さんの考え方が現れていると思いました。」


 五月のかわせみと十二月のやまなしが何を表していると思うかについては、全員が自分の意見を持つことができた。主題について初めはうまくまとめられなかった児童もいたが、友だちの意見を聞いて「なるほど」とうなずき、自分の考えをまとめることができた。
 「やまなし」の初発の感想では、「わけがわからない」「クラムボンって何?」という意見が大半を占めていた。また、二枚の幻灯を視点を決めて読み進めていっても、様子は想像できるが、賢治の伝えたいことまでは分からないという様子であった。しかし、「イーハトーヴの夢」を読み、賢治という人物、理想や生き様を知り、それらと「やまなし」を重ねて、読みを深めることができたようである。
 何度も読んだり、情景を想像するだけでなく、作者について詳しく知ることも読書を楽しむ方法であることを学んだ子どもたち。賢治の他の作品を読み比べる活動はもちろん、他の作者についても興味を持って、読書の幅を広げる意欲へとつなげていきたい。
(長浜市立長浜南小)