本棚  希望のつくり方
玄田有史 著 BK1
岩波新書 2010.10 760円
希望のつくり方

 希望学という学問があることを初めて知った。希望が持ちにくいといわれる現代社会の中で、希望がないと感じるようになった理由や、個人を取り巻く社会のありようと希望の関係などを研究するのが「希望の社会科学」である。

 希望をつくるためのヒントが次の英文で説明される。
 Hope is a Wish for Something to Come True by Action.
 1つめは「思いや願い」、2つめは「こうありたい、ああなってほしいという具体的な何か」、3つめは「実現」のための段取りや道すじを考えること、4つめは希望をかなえるための「行動」である。

 希望を持てるかどうかは、その人が社会においてどれだけの可能性が開かれているか、また、希望は人と人とのつながりによって見出されたり実現できたりするので、他の人との関係性も希望を左右するポイントである。さらに、希望には物語性が欠かせないという。希望が失望に変わっても新しい希望へ修正していけること、挫折を経験してもそれを語れること、努力が無駄になることをいとわないことが、希望を生んでいく。

 「希望は、未来の幸福を保証するわけではありません。実現見通しのある希望は、現在の強い幸福感につながります。」(p144) 自分には希望がないという人はぜひ一読を。

第1章 希望とは何か
第2章 希望はなぜ失われたのか
第3章 希望という物語
第4章 希望を取り戻せ
おわりに 希望をつくる8つのヒント
(常諾真教)