巻頭言
言語環境について
武 井 英 昭
学校教育でいう言語環境とは、学校における先生の言葉遣いや教室や廊下等に掲示されている文字言語の情報を含めたすべての言語に関する情報のことです。その意味で、国語教育は、教育課程外のところで無意図的に行われているということもできます。 言語環境を整えようと実践すれば、いわゆるヒデュンカリキュラムにおいて、子どもたちの国語教育を意図的に推進できます。学校全体で、子どもに関わる誰もが、意識して言語生活を見つめることによって、学校の言語環境は整えられるのです。 適切な教師の言葉遣い・板書・様々な会(朝礼・朝の会・児童会等)・放送・掲示物・新聞等々。 共通語と方言の両方を大事にする学校における言語生活。 家庭においても、普段から言語環境を整えるよう配慮することも大切になってきます。難しいことではありません。「乱暴な言葉遣いをしない。文字をできるだけ整えて書く」などに注意すると、それを見聞していている子どもの生活に自ずと浸透していくのです。 「さざ波国語教室」の代表である吉永幸司先生は、「学校全体で丁寧な言葉遣いで生活するよう指導を行うとともに家庭にもお願いしたところ、子どもの生活全体が落ち着いてきた」と報告しています(新しい国語実践の研究会)。 こうに考えますと、保護者は、言葉の教育を日常的に行う先生であるということになります。また、子どもは生活の仕方や生き方を保護者の生活を見ながら自然と学び取っていくので、保護者は、学校の先生以上に大きな影響を子どもに与える、人間生活のすべてにわたる教師であるといえるのです。 読書好きの母親の姿は子どもを読書に誘います。入学したばかりの子どもに必要なことは、読書です。いい絵本を一冊用意してやると、子どもは、これを何度も何度も読みます。そのすべてを覚えてしまうまでにこれを好きになります。絵を通してその物語を想像します。文字として書かれていない行間も読みます。お母さんは、絵本をめぐって子どもと会話を楽しみ、親子ともに豊かな気持ちになれるのです。 分からないことは調べて明らかにするという態度を保護者が示せば、分からないことをそのままにしておかず、どうしたら分かるようになるかを考える子どもに育ちます。 (高崎市立高松中学校校長)
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