巻頭言
夢を追いかけて
奥 平 朋 子

 過日、吉永先生のご著書『国語力は人間力』を拝読しました。人間として一番大切なことは、相手の立場に立って考え、言葉で心を伝えることではないでしょうか。国語力があってはじめて他の教科もできるのです。本を読み、正しく理解する能力を身につけ、そして考える人に成長していくのです。自分の心を相手に言葉で正しく伝えることができてこそ、人間関係を円滑にして生きていくことが可能だと私も思います。

 私は京都女子中学から高校、短大へと進み、昭和二十九年に学園を卒業致しました。在学中仏教のお話の時間があり、親鸞聖人やお釈迦様のお話を学ぶ機会を得ました。当時、その内容を理解するまでには至りませんでしたが、心のどこかに何時も「温かい思いやりの心」「周りの人に感謝する心」「社会のお役に立つ心」といった仏教の教えがあったように思います。その心の教育のお蔭で今の私があります。

 現在私が絵と書を教える仕事に恵まれているのも、高校卒業時に校長先生が書いて下さった、一枚の色紙との出会いがあったからです。勢いよく描かれた竹と文字の入った色紙を頂戴した時、嬉しくて感激したことを今も鮮明に覚えています。私もこのように絵も書も書ける人になりたいという願望が目覚めた瞬間でした。

 その後、子育てを終え、やっと自分自身のために自由な時間が使えるようになり、滋賀県にある書道専門学校に入学した時は、五十三歳になっていました。勉強は面白く、楽しく、のめり込むように学びました。ふと気がつくと喜寿を迎えていました。

 ようやく少しは絵も書も書けるようになり、昨年『得手が見十二か月』今年は『筆ペンではがきに書く百人一首』(知道出版)を続けて刊行致しました。  何歳になっても諦めず、夢を持ち、目標を追い続けることが、私の生きる力となっているように感じます。書の道は遠く、これで満足ということはありません。今日よりも明日と、一歩でも向上するよう努力し、生涯学習していきたいと思います。

 京女で受けた教育のありがたさを日々感謝し、私とご縁のあった人々に支えられて今日があります。「おかげさま」と毎日手を合わせて暮らしています。
(淡海書道文化専門学校教授)