本棚  ドキュメント高校中退 いま、貧困がうまれる場所
青砥 恭 著 BK1
ちくま新書 2009.10 740円
ドキュメント高校中退

 6月に発表された平成21年度文部科学白書には「経済的格差が教育格差に影響し、それが格差の固定化や世代間の連鎖につながりかねない。教育に社会全体として資源を振り向けることが喫緊の課題である」と述べられている。本書の中で、著者が聞き取った若者たちの言葉はまさにそのことを裏付けている。

 著者は県立高校を学力順に5つのグループに分類して、授業料の減免率、中退率を比較している。進学校のグループはどちらも2〜3%程度であるが、底辺校のグループは授業料の減免率は20%、中退率は30%以上とどちらも高い。また、経年変化を見ると、進学校ではあまり変わらないが、底辺校では年々増加してきていることがわかる。

 貧困世帯の若者が教育を受け続けられず、中退して社会へ出て行く。しかし「高校生の頃はバイトの仕事はあったが、中退したらバイトもない」と語っているように、学歴も資格もなく低収入で生きていかざるをえない。まさに経済的・教育的格差が世代間で連鎖していく。著者は、高校教育の義務化、高校における職業訓練機能、貧困層への経済的な支援などを提言している。(常諾真教)