自分の思いや発見を短歌に表す
白 髭 英 之

 「短歌・俳句の世界」(6年・光村)の学習に取り組んだ。教材名についているタイトルは、「言葉のひびきを味わおう」である。学習を進めるにあたり、学習指導要領の【伝統的な言語文化に関する事項(中学年】を読み返した。短歌や俳句について、(ア)易しい文語調の短歌や俳句について、情景を思い浮かべたり、リズムを感じ取りながら音読や暗唱をしたりすることと示されている。

 教科書に掲載されている短歌は、『石走る 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも』という志貴皇子の短歌である。

 学習指導要領に書かれているように、文語調の短歌を味わうためには、音読や暗唱の学習を十分に取り組むことが必要である。まず、何も言わず、短歌を全員で読んでみた。そうすると自然に五・七・五・七・七のリズムで読んだ。理由を尋ねると、百人一首で読んだ経験があるからと答えた。子どもたちは十分ではないにしろ、読み方には慣れているのである。さらに、暗唱したり、2人で、班で、列で音読を繰り返したりするなどした。音読するだけでは単調になるので、どれだけ上手く読むことができるか、歌人になりきって音読をしたりした。繰り返すうち、自然に読み方にリズムが生まれた。

 この学習の中で、自分の体験をもとに短歌を作ることを考えていた。そこで、志貴皇子の短歌の意味について全員で考える時間を設定した。短歌には喜びや悲しみなど、感情が込められていることに気付かせたいという思いからである。しかし、短歌を読む機会があっても、その内容まで考えたことがない子どもたちにとっては難しいことである。そこで、意味ではなく、その短歌からイメージできるものを探っていった。

 この後、短歌づくりに取り組んだ。修学体験学習をテーマにし、自分の思いや発見を短歌に表すことを大切にした。
 ある子どもの作品。
 平城京 朱雀門が 開門し 通ってみると 役人気分
 この作品に込めた思い。
 修学体験学習で心に残っているのは、平城京です。すごく広くてびっくりしました。朱雀門では開門を再現するイベントを見ました。新年には、天皇がこの門に出向くらしいのですごいんだなと思いました。
 その場の雰囲気に浸っていることが伝わってきた。

 志貴皇子の短歌には、春になった喜びが表されていると解説されている。子どもたちが、桜が咲いたり、生物が眠りから覚めたりするなど、生命が輝き始めることに喜びを感じること自体あまりないのではないかと思う。であるならば、短歌の学習は感性を磨いたり、心を耕したりする機会につながっていく貴重な時間であるように感じた学習であった。
(彦根市立城南小)