学習との出会い
白 髭 英 之

 本校の新年度の入学式・始業式は、12日の月曜日であった。6年生の担任となった。そのため、6年生の子どもたちは入学式の後片付けをしなければならず、その日は、教科書を配ることで精一杯であった。学級の子どもたちの名前を呼ぶことも、自分の思いを話すこともできなかった。

 このような状況だったので、6年生での初めての学習は、翌日の始業前の「さわやか読書」となった。6年生としての学習を心地よくスタートさせたいと願う一方、読書を始める時刻と朝の打ち合わせが重なるので、子どもたちがどのような面持ちで学習を始めるのか、見届けられなかった。

 学級の子どもたちは読書が好きなのか、読書に興味があるのか、どのような本を読んでいるのか、まったくわからなかった。
 そこで、前日に、自分自身でこつこつ買い集めた絵本や学習マンガ、人気シリーズなどを教室の後ろに並べておいた。読書が嫌いな子どもであっても、学習マンガであれば本を手に取るのではないかと思った。そして、黒板に「8:30読書スタート」とだけ書いておいた。

 朝の打ち合わせを終え、教室に上がると、いっしょうけんめいに本を読む子どもの姿が目に入ってきた。元気な声で「おはようございます」とあいさつをしたかったが、子どもたちは読書に打ち込んでいるので、静かに教室に入った。私も自分の席で読書を始める。春休み中に読もうと思っていて、読み切れなかった本である。「先生何してるん?」というような視線を感じながら、本の世界に引き込まれていく。15分間の読書タイムであったが、あっという間に時間が過ぎ、思っていた以上にたくさん読むことができた。本校赴任以来、できるかぎり子どもたちと一緒に読書をしようと思っていたが、ノートチェックや○つけに時間を使いがちになっていた。今年は、読書量を増やそうと思う。

「では、本を片付けましょう。」
と声をかけたと同時に、子どもたちが手にしていた本を見た。何人かの子どもが、家から本を持ってきていた。読書をする心構えができているのだ。
 ある子どものその日のふり返り日記から…。
「みんな静かに読書をしていて、すごいと思った。」

 心地よく学習をスタートさせることができたことをうれしく思うとともに、何より、本の世界に引き込まれている子どもたちの輝いた目を見ることができたことをうれしく思う。
(彦根市立城南小)