巻頭言
アニマシオンと国語の授業
常 諾 真 教

 3年生の子どもたちと図書室で。
「1人1枚ずつカードを配ります。カードは青、赤、緑の3種類あります。」
 青のカードは「エルマーのぼうけん」「おしゃべりなたまごやき」「わすれられないおくりもの」「龍の子太郎」「あらしのよるに」「ごめんねともだち」など10冊の書名。赤はそれぞれの作者名。緑のカードには、「動物島にとらわれているリュウの子をたすけるために、男の子はチューインガム、わゴム、じしゃく、虫めがねなどをリュックに入れ、ネコといっしょに島へわたります」のように本の内容の簡単な紹介が書いてある。

 30人の子どもたちにカードを渡したところで、青の書名カードをもっている子だけに読み上げてもらう。 「では、青の書名、赤の作者名、緑の説明がそろうように、3人1組になってください。わからなかったら、図書室の本を探してもかまいません。」
 多くの子が知っている本は3人そろうのが早い。書名と説明とは結びつけられても、作者名は覚えていないことが多いので、本を探し始める。よく本を読んでいる子に尋ねに行く子もいる。20分ほどで3人組ができた。最後まで残っていて不安そうに3人組になったのが、「わすれられないおくりもの」のグループ。他の子に本を見つけてもらって安心した。

 1組ずつ順に、本を見せながらカードを読む。その都度、読んだことのある子に手を挙げてもらう。
「その10冊の本は、教室に置いておいて、おもしろそうだな思った本を読んでみてください。」

 これは、『読書へのアニマシオン75の作戦』(M・M・サルト著 宇野和美訳 柏書房)に紹介されている「作戦63 一緒のほうが、うまくいく」を基にしている。
 「読書へのアニマシオン」はスペインで開発された、子どもが読む力を身につけるための教育方法である。この10年ほどの間に、日本でも実践が広がってきた。

 国語の読みの授業の中に、アニマシオンの手法が利用されることも多いが、子どもの活動は活性化しても、「読書への」アニマシオンにはなっていないように思われる。せっかくの優れた方法を、子どもが読書に向かう有効な手だてとして活用していきたい。
(野洲市立中主小学校長)