読書単元の学習計画を見直す「マザー・テレサ」
村 地 和 代

 伝記の読み方を学び、伝記など事実に基づいた物語に興味を抱き、読書指導へとつなげたいと考えた。東京書籍5年下の10月教材に「マザー・テレサ」が取り上げられている。以下のように計画した。

第一次 マザー・テレサについて描いた複数の本や資料から(41冊用意。複本有、22種類)1冊選び、読む。
 ・「ぼくのタイトル世界一」を行い、意見交流する。※読書アニマシオンの手法を用い、一人ひとりがもっとも強く心に残ったことを短い言葉で表現する。その理由を根拠に基づいて書く。
第二次 教科書の「マザー・テレサ」を読む。
 ・教科書を読み深める。
 ・「ぼくのタイトル世界一」を行い、意見交流する。
 ・「紹介カード」にまとめる。
第三次 いろいろな伝記の本(190冊用意)を読む。
 ・ 「紹介カード」を作り、交流する。

 第一次の活動では、同じ本を選択した子もいたが、黒板に28個のタイトルが並んだ。
「命あるものすべてに」
「貧しい人のためにがんばるマザー・テレサ」等。同じタイトルは一つもない。その訳を問う。
「本が違うからだと思います。」
「付け加えて、本が違うということは作者も違うからです。」
「同じ作者の書いたものならどうか」と投げかけ、第二次へとと入る。第一次で様々なマザー・テレサを知った子どもたちはそれをベースとしながら教科書を読む。
「ぼくの読んだ本には、テレサが日本に来た時のエピソードが書かれていました。(略)だから教科書の〜と同じ意味だと思います。」

 タイトルの交流をする。同じタイトルは一つもない。
「私は、マザー・テレサだけが美しい心ではないと思います。理由は貧しい人がわずかな米を半分にわけて裏の人に持っていったからです。私だったら、…(略)マザー・テレサだけがみんなを助けたのではなく、貧しい人たちも助け合ったからだと思います。」
「テレサだけではないとは? その他の人は誰?」
「シスターやブラザー」「世界中の人」「病気の人」「友達」…
途中、何度も問い返しをしながら伝記を通じて、一人ひとりがテレサの心をプレゼントしてもらっていることへとつなげた。
『テレサの心は、今も人々の中に生きている』
 子どもが見つけた教科書の中の1文を全員で読む。
「同じ作者なのにタイトルが違うのはなぜ?」最後に投げかける。
「一人ひとり心が違うからです。」
「感じかたも違います。」

 伝記の読み方を学ぶという視点で、多種類のものを読むことから教科書教材へと学習計画をたてたことが、次の学習が深まっただけでなく、個々の受け止め方や捉え方は違うという理解へとつながった。そして、何より、普段本を読まない子が図書室に足を運ぶ姿が見られるようになったことがもう一つの成果となった。
 今後、更に考えが深まる交流にするために、緻密な教材研究や指導力を磨いていくことを大切にしていきたい。学習後、「紹介カード」は1冊の本となり、図書室に置かれた。
(湖南市立下田小学校)