人権教育の取り組みから「はだ色」
箕 浦 健 司

 毎月1回、朝の学習の時間「さわやかタイム」の時間を利用して、人権に関わるビデオ放送を行っている。内容は、人権に関わる内容の絵本の読み聞かせなど。放送の後は、学級で話し合いをしたり、感想を書いたりしている。視覚に訴えることで、子どもたちも理解しやすく、昨年度から続けている取り組みである。

 今回、テーマに選んだのは、「はだ色」という言葉について。図画工作科等で人物画を描き、彩色するとき、子どもたちは「はだ色」という言葉を使う。しかし、絵の具や色鉛筆、クレパス等の表記を見ると、「はだ色」とは表記されていない。「うすだいだい」「ペールオレンジ」とされている。これは、特定の色を「肌色」と限定することは、国際社会において配慮に欠けるという判断のもと、各メーカーで訂正がなされたからである。

 この名称変更については様々な議論があり、各方面から多様な意見があることは事実である。しかし、子どもたちにとって身近でわかりやすい話題であり、あくまでも人権的な「配慮」から、名称変更がなされたという面を強調して伝えれば効果があると判断した。

 初めに、絵の具と色鉛筆の映像を見せ、「この色は、何色でしょう」と問いかけた。子どもたちは、「はだ色!」と口々に叫ぶ。その後、「はだ色」の表記が訂正されたこととその理由を説明し、世界中の人々の写真を見せたことで、子どもたちは納得した様子。放送後、自分の色鉛筆や絵の具を取り出し、「ほんまや、うすだいだいいろって書いてある」と確認する子がいた。「肌の色って、たくさんあるんだなあ」「そんなこと、考えたことなかった」などとつぶやく姿もあった。「大切なのは、違いを尊重し、認め合うこと。肌の色だけでなく、私たちは一人ひとり、誰もが違う存在。自分だけの良さを見つけたり、友だちの良さを見つけたりしていこう」と結んだ。

 後日、ある子どもが「さあ、はだ色を塗ろう。あ、違った。うすだいだい」と話していた。今回の放送のねらいは、決して単なる禁止、言葉狩りではない。子どもたちに、人権尊重の視点を与えることである。子どもたちは、毎日の生活の中で、言葉を介して人と関わっている。人を傷つける言葉か、大切にできるか言葉かを判断する力、感性を育てていく必要がある。そして、言葉における力を身につけるのは、国語科の学習の時間である。

 吉永幸司先生は、「国語科を学ぶということは、生活がよくなるということ」というお話をよくされる。それは、人権的な視点から見た人と人との関わりにおいても同様だろう。言葉に立ち止まり、その意味をよく考え、その場に応じた適切な言葉を使える力を育むことが、豊かな人間関係を生み出すことにつながっていく。今回の放送内容を考えるに当たって、国語科の責任の大きさを改めて実感した次第である。
(長浜市立長浜南小)