本棚  日本語教のすすめ
鈴木孝夫 著 BK1
新潮新書 2009.10 740円
日本語教のすすめ

 日本語教の説くところは、「日本語という素晴らしい言語を知らずに空しく死んでゆく人を、一人でも少なくしよう」ということである。教祖は著者であるが、信者はほとんどいないという。

 日本は経済大国になったが、言語の壁があって、意思疎通がうまくいっていない。「口の痺れた巨人」とか「声を出さない巨象」などと悪口を言われる。もし、日本語が世界の知識人に普通に学ばれる言語であって、日本語の新聞や書籍が諸外国でどんどん読まれていれば、誤解や摩擦が遙かに少なくなるだろうと著者はいう。

 日本の歴史をみれば、中国語や朝鮮語をはじめ、その時々に必要な外国語を学び翻訳して、外国のすぐれたものを取り入れてきた。これからは諸外国が日本の文化や技術、日本人の考え方や意見を日本語の書籍文献を読むことで吸収できるように、もっと対外援助をして、日本語を国際普及しようというのが著者の提案である。

 日本語は欧米語に比べて、劣った遅れた言語であると考えている日本人は多いが、そうではないということが、本書で述べられている。それぞれの言語には特質があり、それは優劣の問題ではなく、文化の違いによるものである。特に人称代名詞に関する考察は示唆に富んでいる。(常諾真教)