全校で音読(2)「やまなし」(宮沢賢治)
吉 永 幸 司

 全校音読指導で工夫したことは次のことである。

(1) 全校という場を活かしたこと
 1年から6年の子が1人1文を音読するという役割をもったことは、子どもに緊張感を持たせる上で効果があった。それぞれの子がしっかりと音読をしたことで場面の様子など印象的に理解できたようである。

(2) 話を引出す方法を指導したこと
 感想を聞く場面で、6年生に感想を聞く役割(司会)を持たせた。
 感想を発表する子は、即席に指名をされた1年から5年までの日直である。心の準備もないまま感想の発表になる。
 6年の子はいきなり、「感想を言って下さい」と言い出そうとした。そこで、それを遮って、話を聞き出す方法小声で指導をした。
○自分の感想を言って、それから聞く。
○「どう思いましか」とか、「どの言葉を覚えていますか」とか聞きたいことをしっかり言う。

 この後、司会の子は次のように質問をした。
「6年の野崎です。ぼくは、川の底のきれいな様子を一番に思いました。これが僕の感想です。どんな感想を持ったか聞かせて下さい。」 と質問をした。聞き方がよかったのだろうか、5年生は「題の言葉が出てこないのはどうしてかなと思いました。」と感想を述べた。3年生は「感想が2つあります。1つは、クラムボンという意味がわからないことです。2つめはかにがかわいいなということです」と1年と2年は「クラムボン」が印象に残ったという意味のことを発言していた。1年から5年までの感想をを聞き出した。(感想の述べ方の上手さを取り上げて紹介をした)。数秒の指導を受けてしっかり司会の役割をやり遂げたので、緊張感がいっそう高まった。

(3) 教えることと指導をすることを分けたこと
 どの授業でも教えることと任せることを分けることが大事であるという考えは、全校音読でも同じである。全校の場で発言したり音読をするという言語活動の機会は子どもにはそれほど度々あるものではない。そこで子どもの活動を多くしようとして、教師の出方を控えた。その結果、次のような活動が生まれた。感想を発表する子、感想を聞く役割を担う子、音読をする子、学習の感想を述べる子というように役割を持たせた。
 指導では次のことを行った。ことば、キーワードの見つけ方、感想の聞き方や発表の仕方を指導をした。活動を見守ることに力を注いだ指導であった。
(京都女子大学)