本棚  教育と平等 大衆教育社会はいかに生成したか
苅谷剛彦 著 BK1
中公新書 2009.6 840円
教育と平等

 本書の主題は、戦後日本の教育における「平等」とは何であったのかを明らかにすることである。そのために著者は「義務教育費」の配分に着目する。

 戦後の財政逼迫した中で、戦前から続いている地域間格差(都道府県の格差、都市部と町村部との格差)を解消することがまず第一に考えられた。学級定員の上限を定め、学級数を基に教員数が求められた。市町村費であった教員給与を国と県とが半分ずつ負担することにより、数の上での格差解消が図られ、さらに都道府県による広域人事異動の促進によって質の面でも平等化が図られた。また、教材規準の設定により、どの学校にも教材備品が整えられた。

 舞台(学校・設備)、台本(教科書・学習指導要領)、役者(教員)に加え、小道具(教材)まで「標準化」された。このようにして達成された結果を、著者は「面の平等」とよぶ。

 欧米では個の学習を保障するために「個人」を単位に資源配分の平等を考えるが、日本では学級や地域といった集団的・空間的な集合体を単位に資源配分の平等を考え、個人間の差異を際だたせないようにした。つまり、個人の能力や達成の差異に応じて必要とされる学習の個別化、「個の平等」は図られてこなかったのである。(常諾真教)