巻頭言
朝の一斉読書
原  俊 雄

 朝の全校一斉読書は、どのような効果をもたらすのでしょうか。
 私の学校でも全校読書を実施することになり、さまざまな期待をこめてのスタートを切りました。
 中学生は、成長過程により読書傾向や姿勢が違うので、学年ごとに異なる取り組みをしました。私の学校に生徒が入学する小学校は5校。全部が一斉読書を取り入れていました。実施回数には差がありますが、どの小学校でも「読み聞かせ」を行っていました。

 1年生は、中学生としての読書に移行する時期なので、この「読み聞かせ」を中心に置きました。担任が本を選び、読み聞かせたのです。「百万回生きたねこ」などの絵本、短編小説が多かったようです。担任への親しみがわく、という効果がありましたが、自分で選んで読んでみたいという生徒もいました。
 2、3年生は毎日、一斉読書を実施しました。担任、副担任も一緒に読書をしました。朝読書により、読書時間が確保できることから読書量も増えました。15分間の朝読書で、男子は平均30ページ、女子は40ページ読みます。月平均読書冊数も。実施前の1冊から2冊となりました。

 読書習慣をつける工夫の1つに学級文庫の設置があります。かつての名作や、担任が読んでおもしろかった本を置きました。一斉読書が始まるまではあまり読まれなかった本も、朝読書では活用されるようになりました。
 生徒達は、はじめのうち個人的な読書にとどまっていました。小学生のころに読んだ本の読みなおしや、保護者、教員に薦められた本を各自、読んでいたのです。
 そのうち、1人があるファンタジーを読んで友達にその魅力を伝えたところ、次々にその本を借りて読むという現象が起きました。友人同士の口コミで図書室や学級文庫の利用が増えていき、お互いに語りあうことによって、本の理解も深まっていったのです。一斉読書の思いがけない効用でした。

 川崎では、今年度、中学生向けに「かわさき子供読書100選」
を作成しました。ここに紹介された本を図書室や学級文庫に入れることにより、読書に親しんだり、その幅を広げたりすることが期待できると思っています。
 朝の全校一斉読書は、ただ本を読むだけでなく、生徒同士の輪を広げ、読書習慣を定着させるのに大変役立つものと思われます。
(川崎市立御幸中学校)