本棚  あったか言葉とチクチク言葉
佐藤 拓 著 BK1
宝島社 2008.1 1100円
あったか言葉とチクチク言葉

 若者や子どもたちの間で、「うざい」「きもい」「死ね」「消えろ」などという言葉が飛びかっている。そのような状況を何とかしたいと「言葉の教育・心の教育」に取り組んでいる4つの小学校に取材したノンフィクションである。

 群馬県大泉町立東小学校。「チクチク言葉を追放し、あったか言葉で満たしたい」。子ども一人一人が自分が言わないでおこうと決めた言葉を書き出し、封筒に入れて封印する。チクチク言葉を言わないようにしましょうという指導ではなく、「封印する」という具体的な作業を通して個々の子どもの心に強く訴えかける指導になっている。

 足立区立五反野小学校。「あいさつで人間関係力を高めたい」。「あいさつ標語」「あいさつ通り」のノボリなど、学校・保護者・地域住民が一体となって取り組んでいる。

 小矢部市立石動小学校。「変われるのは大人が先か、子どもが先か」。児童の言葉づかいの指導とともに、富山県教委が作成した「人権意識チェック表」をもとに教師が変わることもめざしている。

 小矢部市立岩尾滝小学校。「コミュニケーション・トレーニングで心の教育を」。言葉の指導だけでなく、アサーションなどのソーシャルスキル・トレーニングを導入して心の教育を実践している。

 いずれも参考にしたい取り組みである。(常諾真教)